Mojo+Poly、Chord“モバイルサウンド”への愛憎

 英Chord Electronicsの「Poly」(ポリー)が、ついに、2017年12月8日に発売されました。日本での販売・サポートはアユートで、私はフジヤエービックで予約し、先着特典のケース付きで購入できました。

 さて、あれはいつのことだったか……ポータブルDAC/アンプの「Mojo」(モジョ)が発売されたのは2015年11月で、その頃に開催されたヘッドホン祭りで、今後の展開として、Mojoにドッキングするタイプの“無線LAN機能を追加するモジュール”や“SDカードリーダーのモジュール”の開発が予告されました。私はこのSDカードリーダー機能に非常に惹かれ、これの発売が確定したらMojoと一緒に買おうと思っていました。

 しかし時は流れ、続報がないまま1年が経過し(笑)、忘れかけていた頃、2017年1月初旬のCESに合わせて、Polyの情報が初めて公開されました。蓋を開けてみると、無線LAN機能やSDカードリーダー機能はひとつにまとまり、操作は外部からやスマートフォンアプリから行うのが前提という、思い切ったネットワーク志向の仕様で、このタイミングで私はMojoを買いました。

 しかしやはり時は流れ(笑)、春頃と思われていた発売も順調に伸びていきます。2017年7月に開催された「ポタフェス」にてアユートのブースで聞いたところ「技適(※通信機器の認証)は通っており準備はできているが、生産ラインをHugo 2にまわしており、量産開始が遅れている」との回答でした。この時点で、秋頃まで伸びるかな~という感触で、実際に米国のMoon Audioなども発売時期の記載が毎月延期されていましたが、結果は2017年10月に本国のイギリスで発売、日本での発売は2017年12月8日という形になりました。まぁ、つまり、構想発表から2年が経過しているわけですね。100万円コースもごろごろしている超高級オーディオメーカーであるところのChordとしては、2~3年ぐらいの開発はなんてことないかもしれませんし、Mojoの開発には3年かかったそうですが、スマートフォンやテクノロジー業界に浸かっている身としてはめちゃくちゃ待たされた、むしろ途中で少し忘れてた……というのが正直なところでしょうか。

 もっとも、そのPolyのコンセプトやユニークさは失われていないですし、ベースとなるMojoの仕様も、市場のPCMやDSDの進化の速度が落ち着きはじめていたこともあってか、世間から取り残されずに耐えています。

 ちなみに、展示会などで、Mojoを試聴した人が「バランス接続だったら……」と担当者にコメントしていく場面を見かけますが、ChordのDAC製品の機能は基本的に、ESSや旭化成などのDACチップを使わない「FPGA」(半導体の機能をプログラムで自由に実装できる基板)で実現されており、楽曲データのアナログ化に際してのタイミングや時間軸に対し、(少なくとも同時代に提供されている)DACチップでは実現できない、正確性を非常に重視した独自のアルゴリズムが組まれています。Chordのデジタル回路設計担当のロバート・ワッツ氏がメディアのインタビューで答えたところによると、FPGAや、プログラムで実装されるWTAフィルタ、パルスアレイDACを駆使したChordのアプローチでは、シングルエンド(アンバランス)でもノイズや歪みが少なく、既存のDACチップをバランス化する時のようなメリットは少ない、という考えのようです。

 実際にポータブル機器におけるバランス化は電源に対する負担が大きいとされ、メリットを十分に発揮できないという懸念もあるようです。ユーザー側も、盲目的にバランス化を求めるのではなく、ChordのFPGAのように、継続して取り組まれているコンセプトの製品は特に、開発者の意図を汲んだ上で利用していきたいものです(フラグ)。

 最初に、忘れられがちな(?)音について触れておきます。私はそれまでMojoに対して「Shanling M1」のUSBデジタル出力を、ShanlingのUSBケーブル(SHANLING L2 TypeC to Micro USB cable)で接続して利用していましたが、Polyでは、音質はめざましく良くなりました。

 一言で言うと「鮮烈」で、明るく生き生きとして、切れ味の鋭いシャープな音です。Mojoってこんな音も出せたんだと驚くと同時に、「これが、ChordがMojoで出したかった音なのか」と少し感心してしまいました。

 Polyはまだまだ運用しづらい部分も多い、課題の残っている製品ですが、このサイズでこの音を持ち運べるなら、と苦労を許せてしまうのも、私にとっては一定の事実です。逆に、音質的な向上がなかったら、以下のようなめんどくさいことは投げ捨ててFiioとかCowonとかを物色しはじめていたかもしれません。

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