東芝 FlashAir

 東芝の無線LAN搭載SDHCメモリカード「FlashAir」(SD-WL008G)が3月10日に発売されたので買ってみました。

 以下は長くなったので簡単に書いておくと、FlashAirは無線LANアクセスポイントとなり、スマートフォンなど接続した端末のブラウザで中身を見たりコピーしたりできるというものです。

 同じように無線LAN搭載のSDカードとして「Eye-Fi」がけっこう前から販売されています。今までEye-Fiの対抗となる製品がほぼ出てこなかったのは、よくよく考えてみると少し不思議なくらいですが、この東芝のFlashAirはさまざまな意味でEye-Fiとは異なるアプローチになっており、単なる二番煎じになっていないのが興味深いところです。

 今のところラインナップは1つで、SDHCの8GB、Class 6というものです。容量や速度については今後の動向を見ながら拡充が検討されていくようです。8GBのメモリーのうち、ユーザー領域は7.2GBで、無線LANの仕様はIEEE802.11b/g/n、セキュリティはWEP、TKIP、AES(WPA/WPA2)となっています。通常はWPA2-AESが使われます。なお、Webサイトなどで紹介されている機能のうち、いくつかは対応カメラの登場を待つ状態となっており、現時点で利用できるのは「ワイヤレスデータ転送」のみと、シンプルな内容です。

 無線LANについては、国内の無線認証(技適)だけでなく、北米、欧州の認証も取得していることで35の国と地域に対応し、今後も拡大される見込みです。これにより、外国旅行に持参した際には胸を張って利用できるというわけです。もっとも、従来から無線認証の有無がエンドユーザーレベルで問題になることは少ないですが、この製品がグローバルで販売されることを念頭に置いて開発されているという証でしょう。カードの裏側には認証番号やマークや印字されています。

 Eye-Fiはデジタルカメラとデジタルビデオカメラでの使用が前提でしたが、FlashAirはSDHCカードに対応する一般的な機器なら基本的に対応できます。もちろん、カメラが主要な用途として想定されていますが、仕組みとして標準的なものを利用しているので、カメラ系にとどまらず幅広く利用できるのが特徴です。私はデジタルカメラで利用するつもりですが、アイデア次第でカメラ以外でもいろいろ活用できそうです。カメラ系の対応機種はWebサイトで案内されています。


 
■FlashAirに保存されているデータをブラウザで表示

 メモリー部分については特筆すべきところはありませんので、気になるのは無線LANの通信部分です。無線LANを利用した通信機能としては、「ワイヤレスデータ転送」「P2P」「サーバーアップロード」の3つが用意されていますが、「P2P」「サーバーアップロード」はカメラ側の対応が必要ということで、現時点では利用できません。ちなみに、「P2P」機能はFlashAir対応機器同士でデータ転送を行う機能です。「サーバーアップロード」機能はオンラインサービスやブログにデータをアップする機能で、公衆無線LAN経由にも対応すると案内されています。

 「ワイヤレスデータ転送」機能が現時点で使える機能ですが、これはFlashAirが無線LANアクセスポイントとなって、クライアントの接続を待ち受けるというものです。考え方はEye-Fiのダイレクトモードと同じです。SSIDとパスワードはFlashAirに初めて接続した際に設定できます(次回接続時には設定画面が出なくなります)。専用ソフト「FlashAirTool」(Windows版のみ)を使ってSSIDを設定・変更することも可能です。

 FlashAirに対しては、スマートフォンやパソコンなど無線LANに対応した機器から、前述のSSIDを検索・選択して接続します。するとFlashAirからはローカルIPアドレスが割り振られ、無線LANルーター、あるいはモバイルWi-Fiルーターなどに接続した場合と同じ状態になるわけです。もちろん、インターネットには接続できるわけではありません。確か4台まで同時接続ができたと思います。

 次に、スマートフォンやパソコンなど接続した機器でWebブラウザを開き、URLに「http://flashair/」(あるいは http://192.168.0.1/)と入力しアクセスすると、FlashAirのメモリーに保存されているデータが(ブラウザ上に)表示されます。そして、必要なデータをスマートフォンなど端末側に保存すれば、データの転送が完了するという訳です。メモリー側は動いているので、この状態でFlashAirが装着されたカメラで撮影を行えば、リアルタイムにデータが増えていくのを確認できます。画像はサムネイルが表示され、それなりに高速に表示してくれます。サムネイルは元画像にリンクされています。

 保存や表示内容はFlashAirというよりブラウザ側の挙動によるので一概には説明できませんが、Androidでは標準ブラウザ、Chromeで問題なく動いています。機会があってiPhoneや“新しいiPad”でも試しましたが、元画像の表示はSafari上では縮小されるものの、保存するとちゃんと元画像のサイズでした。

  

 メモリー内のデータにWebブラウザでアクセスできるという汎用的な方法を採用することで、クライアントを選ばない仕組みになっており、専用アプリが要らないのは比較的分かりやすいといえます。また、FlashAirに保存されているデータは画像に限らずすべて表示され、ブラウザの操作により端末側にコピーすることができます。もちろん、端末側でそのデータが扱えるかどうかは別問題です。

 現時点での課題は、写真データの一括コピーができず、写真を1枚ずつ保存する必要があるという部分ですが、ブラウザで表示しているので、パソコンであればダウンロードツールを使うことができます。Webブラウザでの表示においては、分類やソートなど表示方法も拡充してほしいところですが、ここはHTMLの見せ方次第ともいえるので、ファームウェアのアップデートで改善されることを期待したいですね。スマートフォン用アプリが出てくれば、こうした使い勝手は大幅に改善されるかもしれません。

 なお、このWebブラウザでアクセスするFlashAirのWebサーバー機能では、ブラウザ上の操作でデータの削除はできません。これはFlashAirが装着されたカメラ側との整合性をとるためで、あくまで閲覧や端末へのコピーが基本となります。削除はカメラなどFlashAirが装着されている機器側で行います。

 Eye-Fiのダイレクトモードは、基本的にスマートフォンのアプリのみに対応し、アプリのみがEye-Fiと接続できる仕様です。また、自動転送を基本としているため、スマートフォンに“自動的に送られてくる”という感覚で利用するものでした。一方、FlashAirの「ワイヤレスデータ転送」はスマートフォンなどから“取りに行く”という感覚で、ユーザーの任意のタイミングで操作や転送を行うことになります。この点では、Eye-FiとFlashAirは正反対の感覚といっていいでしょう。

 
■無線LANの自動起動モード

 転送方法と並んで気になるのは無線LANの通信機能を起動させるタイミングです。カメラ側の電池の消費を考えると、無線LANを常時ONにしているのは現実的ではありません。FlashAirでは装着した機器の電源が入ると自動的に無線LANがONになる(SSIDが見えるようになる)自動起動モードが、デフォルトとして設定されています。起動モードの変更は前述のWindows用ソフト「FlashAirTool」で行えます。

 起動モードは関係ありませんが、無線LANがONになってから実際にSSIDが見えるまでには、だいたい20~30秒程度の時間がかかるようです。

 自動起動モードにはタイムアウト時間が設定されており、デフォルトでは5分です。1分、3分、5分、10分から選択できます。タイムアウト時間とは、無線LANが接続されていない時間を指しています。タイムアウトで無線LANがOFFになった場合は、カメラの電源を入れ直すなどすれば再びONになります。

 ここで気付いた人もいるかもしれませんが、この自動起動モードは、別にカメラに装着されている状態でなくてもかまいません。FlashAirに対し電源が供給されれば起動するのです。つまり、SDHC対応のリーダーライターやパソコンのSDHC対応カードスロットなどに装着しても、自動起動モードであれば無線LAN機能が起動します。節操がないといえばそれまでですが(笑)、Webサーバー機能では画像に限らずすべてのデータを表示できる点を組み合わせて考えると、この単純さは使い勝手の幅を広げてくれるでしょう。

 
■無線LANのマニュアル起動モード

 無線LANのもうひとつの起動方法はマニュアル起動モードです。これは、FlashAir内に予め用意されている画像の、プロテクトを解除する(無線LANをON)、再度プロテクトをかける(無線LANをOFF)という、ちょっとユニークな方法で操作します。画像のプロテクトというのはデジタルカメラならどの機種でも用意されている、カギのマークのアレです。上の写真はカメラの操作画面のようで紛らわしいですが、JPEG画像を表示しているだけで、この画像に対しプロテクトをかけたり解除したりすることがトリガーとなります。

 プロテクトを解除した状態、すなわち無線LANがONの状態でカメラの電源を切った場合は、再度電源を入れただけでは無線LANはONにならないので、無線LAN操作用の画像に一旦プロテクトをかけ、再度解除することで無線LANが起動します。

 前述の自動起動モードの場合は、この画像のプロテクトによる無線LANの操作は行えません。

 マニュアル起動モードで無線の操作に使う画像ですが、FlashAir内の「DCIM」フォルダの中にある「100_TSB」というフォルダに保存されています。注意が必要なのは、デジタルカメラなどでメモリカードのフォーマットを行うと、この画像を消してしまうということです(FlashAirToolで戻せます)。自動起動モードには影響はありませんが、マニュアル起動モードに設定していた場合、この画像がないと無線LANを起動する手段が(一時的とはいえ)なくなってしまうので注意が必要です。この仕様はパッケージ付属のマニュアルでも別紙で注意喚起がなされています。フォーマットしてしまった場合は、前述のWindows用ソフト「FlashAirTool」を使って「カードの初期化」を実行することで元に戻せます。ただし、初期化なのでSSIDなどの設定も出荷状態に戻ります。

 なお、カメラによっては「100_TSB」というフォルダ自体を見られない場合があります。その場合はマニュアル起動モードは利用できないので、自動起動モードで利用することになります。

 
 このほか、CFアダプターを用いて、対応機種でないデジタル一眼レフカメラにFlashAir装着しても、無線LANを起動させることができます。当然、利用は自己責任です。なお、CFを利用するようなデジタル一眼レフカメラは、カードスロットへの電源供給をカットする、軽いスリープモードのような機能を備えている場合があるので、そうした設定を変更する必要があるかもしれません。私が持っているニコンのデジタル一眼レフカメラでは「半押しタイマー」なる設定がそれで、この設定を長時間の設定や無限(=OFF)などに設定してやることで、FlashAirを問題なく使うことができました。これはEye-Fi利用時でも同じです。カメラ側の電池の消費は気持ち早くなるので留意する必要はありますが。

 上の写真のニコン「D3」はType II対応のCFスロットなので、写真のサンワサプライのCFアダプター経由でFlashAirを装着できますが、D3は「100_TSB」フォルダを認識しないため、マニュアル起動モードは使えず、自動起動モードでのみ利用できました。ちなみにニコンでは「D4」「D800/E」「D700」など新しいモデルはCFスロットが薄型のType I になっているため、写真のType IIのCFアダプターは装着できません。で、恐らく、SDHC対応のCFアダプターはType IIの製品しかないと思われます……。

 CFではなくSDHCカードに対応しているリコー「GXR」はどちらの起動モードでも問題なく利用できました。

 
■Webサーバーの機能拡充、アプリの登場に期待

 現時点では、Webブラウザでアクセスして1枚ずつ端末に保存するという内容ですが、スマートフォン上で利用する目的なら、ひとまず大きな不満はありません。スマートフォン用アプリがどういった仕様になるのかは分かりませんが、FlashAir側にデータをアップロードするような仕組みがあっても面白いかもしれません。

 8GBで、ヨドバシカメラでは6980円と、先端ユーザーには不満が残りそうな面もありますが、このあたりは今後のラインナップの拡大に期待したいところ。東芝のような大企業がリリースし、かつEye-Fiの対抗馬としては十分に興味深く、ポテンシャルを秘めていると感じます。