ニッシン MF18 デジタルマクロ

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 マクロ撮影用のリングフラッシュとして、ニッシンの「MF18 デジタルマクロ」(ニコン用)を買ってみました。パッケージ内容や仕様は公式Webサイトに譲りますが、マクロフラッシュとしての基本的な優位点のほかに個人的に注目したのは、左右で独立して光量を制御できる仕組みや、ケラレに対応するために内径を広げられる点などでしょうか。ワイド系のズームレンズでない限りケラレるケースは少なそうですが。アダプターリングは、他の製品ではオプションにされていることも多い77mmを含めて、6種類が付属するのも地味ながらありがたい点です。私が持っている「24-70mm F2.8G」は77mmですし、「60mm MICRO F2.8G」は62mmで、どちらも標準で同梱されるアダプターリングで装着できました。

 もっとも、その目的を考えれば「60mm MICRO F2.8G」に装着して使うことになるのですが、ポートレートに使うとなれば「24-70mm F2.8G」のような大口径の標準ズームレンズが便利ですし、幅広く対応できればその分だけ絵の幅も広がります。

 金属製のアダプターリングはフィルターなどと同じくねじ込み式で、レンズに装着しているフィルターにねじ山が切ってあれば、フィルターの先にも付けられます。フラッシュ発光部は4ヶ所のツメでカチッとアダプターリングに固定されますが、取り付ける角度自体は360度、自由に調整できます。フラッシュ発光部はそれほど重くないのは発光部にバッテリーが不要な有線式ならではでしょうか。

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 ちょっと過剰な仕様かな? と思えるのは本体のカラー液晶と、MF18一式を収納できるしっかりとした収納ボックスですが、まぁカメラバッグに常駐させておくタイプの機器ではないと思えるので、収まる場所があるのはいいのかもしれません。液晶がカラー化されていること自体に不満はありませんが、STN液晶と思われる少し滲んだような見た目は、豪華さよりチープさが目立つような気がしなくはないものの、意外にも視野角はちゃんと確保されていますし、モードごとにしっかりと色分けされているので画面が視界に入れば選択されているモードを把握できるといったメリットはあります。

 カメラを縦位置にすると液晶画面も回転し、上下左右の方向キーも画面通りに追随するという仕様は、そこまで求めてなかったけどあったら嬉しい機能という感じでしょうか(笑)。とはいえ、三脚などでカメラを縦位置に固定した場合には便利そうです。ちなみにUIは英語のみのようですが、カメラ的英単語と数字だけなので特に不便には感じません。

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 左右の発光量をマニュアル操作で調整できる機能は、TTL発光モード、マニュアル、ファインマクロのいずれのモードでも可能ので、なかなか興味深い機能になりそうです。左右ってことになってますが、カメラの向き、あるいはフラッシュ発光部の取り付ける角度を変えれば「上下」の発光量を調整できることになるので、接写でも光源が上から、あるいは下からといった写真を簡単に撮影できます。

 ファインマクロは微小発光モードで、もともと明るい環境で絞りを開けて撮影する場合など、フラッシュを補助光的に使う場合に便利そうです。より作品的なアプローチでしょうか。左右の独立した発光量の制御やTTL対応などは、ほかのメーカーのマクロリングフラッシュでも対応していますが、ファインマクロはこの「MF18」独自の機能になっています。他メーカーでは1/64や良くても1/256あたりまでが発光量制御の最小値ですが、「MF18」ではマニュアルモードで1/64まで調節でき、マニュアルモードをさらに微小発光モードにしたファインマクロモードでは1/128~1/1024と、非常に繊細な発光が可能になっています。

 フラッシュとは別に搭載された4つのLEDでモデリング発光も可能で、各モードでSetボタンを長押しすればモデリング発光モードになります。フラッシュとちがって設定中は常時LEDが点灯し、フラッシュが発光する時だけ消灯します。使い方はAF補助光なので、明るい環境ではあまり意味は無いでしょうが、薄暗くてどうにもAFを合わせにくい時には便利です。ちなみにフラッシュの左右の発光量を調整していた場合、その設定もLEDの発光に反映されるので、モデリング発光の時点で大まかに仕上がりを把握することもできます。

使ってみる

 試しに使ってみると、やはりレンズ前数センチの接写でも、フラッシュの光が自然に行き届いた絵になります。そのための機器ですが(笑)。レンズと光源が同軸なのでフラッシュの直接光にありがちなテカリは無くなりませんが、左右(上下)の発光量調整でグッと仕上がりをコントロールできるのが印象的です。

 下の写真はTTLモードでAB(左右≒上下)の発光量を調整したものです。表面が経年劣化でクラックド・フィニッシュになっているのは気にしないでください……。左の写真はAB(上下)=4:1、右の写真は逆にAB=1:4としたものです。実は、左耳のつけ根あたり、表面に写り込んでいるフラッシュの形状で、上下で発光量が異なっている様子を確認できます。片側を発光しない比率も可能です。TTLモードでは比較的大きな比率で指定しますが、ほかのマニュアルモードでは発光量をより細かく調整できます。

 「60mm MICRO F2.8G」の限界の絞りであるF36で接写をしても、マクロフラッシュなら何事もなかったかのように手持ちで撮れてしまうのはなかなか面白いのですが、普段使わないようなF16とかF22とかのかなり絞った領域は、センサーに付いたゴミをこれでもかと強調してくれるので、絞りマクロに出かける際はセンサー掃除も必須になりそうですね……。

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 続きではフィギュアで違いを見ていきます。

左右独立制御で影をコントロール

 マクロフラッシュでフィギュアなどを撮影する場合、明確な意図がない限り、影の落とし方が印象上のポイントになるでしょう。前述のとおり「MF18」では左右の分割制御を応用する形で、上もしくは下からの光量を調節して、意図する影の落とし方が簡単に実現できます。通常のフラッシュでも天井や壁に反射させるバウンス撮影で光源の方向をコントロールできますが、マクロ撮影の細かな調節に対応するのは難しいですね。

 以下の写真はすべて縦位置で、「MF18」のフラッシュ発光部は上下に分割される形で使用しています。

 左の写真は、上下ともに同等の光量で、額に落ちる前髪の影がぼんやりと分かりにくく、鼻やほおの影も強調されていないのですっきりとした印象です。ただ、周囲は暗いので、「夜中に冷蔵庫の中を覗いているところを、冷蔵庫の中からのアングルで描写したシーン」のようなイメージもあります。

 右の写真は、上側の光量を少しだけ強めにしたもので、バウンス撮影に近い絵です。額に落ちる影が濃くなり、ほおの輪郭にも濃い目の影ができています。基本的に上方からの光源は目になじみのある絵になり、立体感が強調されフィギュア向きと言えますが、アニメ的な面の派手さは一歩後退する印象です。

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 上記のような被写体(の顔)の正面から撮影する場合、フラッシュ発光部の上下(あるいは左右)の調節がそのまま意図的な光源方向のコントロールになります。では被写体の正面ではなく、斜めから撮る場合はどうでしょうか。被写体の正面とフラッシュ発光部の面がずれると、光量の当たり方もずれてしまいます。例えばフラッシュ発光部で上下=1:1の光量で発光していても、被写体の正面ではなく斜め上から撮影した場合、上方からの光量が強く、下方からの光量が不足しているように写ります。そうした場合、フラッシュ発光部の下側からの光量を増やすことで、アングルとしては斜め上から撮っているものの、被写体の顔に対しては上下から等しい光量が当たっている、という補正した発光が可能です。つまり、光源は被写体の正面に置いてきた状態にし、カメラだけ斜め上から覗いている、という状態を擬似的に再現するわけです。撮影ブースを使った撮影なら造作もないことですが、カメラと「MF18」の組み合わせだけで、手持ち撮影で実現できるのがポイントでしょうか。

 下の左の写真は上下=1:1の光量で斜め上から撮影したもので、意図する以上に顔に影が落ち、頬の影も強調されすぎてキャラクターの印象が変わってしまっています。髪は後ろまで光が当たっているので、全体像は分かりやすくなっています。

 右の写真はフラッシュ発光部の下側の光量を少し強めにしたもので、被写体の顔の正面に対しては上下から等しい光量が当たり、顔に落ちる影も少なくキャラクターの印象はすっきりと分かりやすくなっています。後方にある右腕や後頭部は影になっていますが、顔と同じように服も分かりやすくなっているので、見せたい部分が強調された絵になっています。

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 スタジオで撮影するならさまざまな照明機材で補完することは可能ですが、「MF18」は撮影者の機動性を保ったままこうした効果を作れるのが強みでしょうか。実のところ「MF18」でもフラッシュ発光部をアダプターリングから外して手でかざせばかなり自由度の高いライティングが可能ですが、いずれにしても、屋外や展示会など、光源が撮影者の自由にならない環境では重宝すると思います。