X-E1

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 富士フイルムの「X-E1」を買ってみました。ここ数年の富士フイルムは、ニコンから「D200」などのボディの供給を受け、センサーを独自のものに載せ替えた一眼レフをラインナップしていたことはありましたが、それ以外だとコンパクトなデジタルカメラが中心でした。ノンフレックスとも呼ばれる(←呼び方は広まっていない)ミラーレス一眼カメラが広まるにつれて、やや遅ればせながら登場したのが「X-Pro1」で、Xマウントというレンズシステムも同時に発表されました。「X-Pro1」を実際に見て「小型版が出たら考えよう」と思っていたので、「X-E1」の発表時はなかなか興奮したものです。

 個人的に気に入っている点は、ハイスペックな電子ビューファインダー(EVF)を内蔵している点や、ローパスフィルターが不要なCMOSセンサーを搭載し、MマウントアダプターでライカMマウントのレンズを装着できること、高性能なAFズームレンスもラインナップされている点、などでしょうか。仕事ならAFの標準ズームでそつなくこなし、遊びならマニュアル操作でMマウントのレンズを使う、という目論見です。

 センサーはAPS-Cサイズで、富士フイルムらしくかなり気合の入った独自のセンサーです。ローパスフィルターが不要な設計なのでMマウントのレンズを存分に楽しむという意味でもポイントが高いです。Xマウントのレンズは当初から単焦点を中心にラインナップされており、ほかのメーカーとは一線を画したこだわりが見えます。

 「X-E1」のレンズキットにはXマウントで初の標準ズームレンズ「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」が付属しますが、シャープで綺麗に写り、AFは静かで速度にも大きな不満は感じず、総合的に見てもよくできていると思います。ズーム操作のためのリングは、回転させるために必要な力が最初から最後まで一定で、こうした操作感だけでも高級ズームレンズの風格があります。ローレット部分も金属ですが、溝が深すぎてホコリが入ると取れにくい問題はあるものの(笑)、ひんやりとしてさわり心地もよろしいのではないでしょうか。個人的にこのレンズは仕事で使い物になったらいいなぁと思い、レンズキットとして都合よく出ていたので買いましたが、プライベートではMマウントレンズなどのマニュアルレンズを中心に楽しむ予定です。

 約236万ドット(XGA)の有機ELのEVFは近接センサー(アイセンサー)や視度補正機能も付いて文句の無い仕上がりです。さすがに光学ファインダーと比べると、輝度の急激な変化に瞬時に追随できないとか、電子装置ゆえのトロさはありますが、解像度や発色は見事なものです。

 背面の液晶モニターは「X-Pro1」と比較するとスペックダウンして2.8インチ、約46万ドットとなっていますが、個人的にはファインダー(このカメラならEVF)を覗いての撮影が大前提なので、特に不満はございません。

 全体的にダイヤルの操作感や塗装など、渋くまとめられており、クラシカルな佇まいでマニュアルカメラ然とした美意識を感じさせつつ、ひとたびAFレンズを装着すればキビキビ使えるという、見た目とは異なる現代的な要素も内包した稀有なカメラだと思います。

ヘリコイド付きMマウントアダプター

Hawk's FactoryのXマウント用ヘリコイド付きMマウントアダプター
Hawk’s FactoryのXマウント用ヘリコイド付きMマウントアダプター

 プライベートでは、すでに持っているMマウントのレンズを使って楽しみたいというのが本望なので、Mマウントアダプターが必要になります。富士フイルムのXマウントでは純正のMマウントアダプターも用意されていますが、私はヘリコイド付きのMマウントのアダプターにしたかったので、「Hawk’s Factory」の、Xマウント用ヘリコイド付きMマウントアダプターを買いました。すにでNEX用にラインナップされ一部で話題になっていますが、このヘリコイド付きアダプターは普通のマウントアダプターとして機能しつつ、ヘリコイド(回転する鏡胴)を操作すれば最短撮影距離を大幅に縮められ、マクロ撮影のように寄って撮影できるというものです。

 Mマウントのレンズというのは最短撮影距離が60cm以上などというレンズが普通で、焦点距離どうこう以前に寄って撮れないというのが基本で、60cmといえば片腕をピンと伸ばしたぐらいですから、例えば食事の席でテーブル上の物の撮影というのはほぼできず、無理に撮ろうとすると立ち上がるとか背もたれに寄りかかるとかちょっと奇異なことになります。そうした誰もが諦めている常識がこのヘリコイド付きアダプターで覆されるというのですから、ローパスフィルターレス+Mマウントレンズで新たな次元を垣間見たように、今時の新しい楽しみ方のひとつなのかなと思います。

 今回買った「Hawk’s Factory」のMマウントアダプターはまぁなんといいますか、ヘリコイドのローレットのデザインが金属なのにラバーパーツみたいに見えてビミョーといいますか、どんなレンズやボディともしっくりこないんですが(笑)、ブラインド操作では手触りで違いが分かって間違えにくいという側面もありますので難しいところです。基本的にヘリコイド部分がむき出しなので正面から見てネジとか見えてますし、動作に問題はないですが全体的に見栄えはよくありませんので、Metabonesや日本のRayqualあたりが作ってくれれば買い直すかもしれません。

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左から「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」「M-HEXANON 50mm F2」「M-ROKKOR 28mm F2.8」
左から「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」「M-HEXANON 50mm F2」「M-ROKKOR 28mm F2.8」

 そのほか、全く触れないのもアレなので簡単に紹介しておきますと、外観の写真の状態は、ストラップにアルティザン&アーティストの「ACAM-E25R」を装着しています。ステルススナップシューターということで(?)挿し色になっていた赤いタグは外しました。あと、「X-E1」にはホットシューのカバーが付属していないので、ニコンのアクセサリーシューカバー「BS-1」を付けました。長さが若干足りない気はしますが、それ以外は問題なく、綺麗に装着できました。

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 以下に掲載した写真(作例)は持っている2本のMマウントレンズから、「M-ROKKOR 28mm F2.8」で撮影したものです。35mm判換算で42mm相当です。絞りはすべてF4だと思います。リンク先は等倍で、RAWをX-E1付属のソフトでストレートに現像しただけです。時計の写真だけ傾きを修正したので解像度が変わっています。線路脇の草木の写真と水餃子の写真がヘリコイドを実際に繰り出して撮影した近接撮影の写真です。

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ソフトウェアと操作性について

 ソフトウェア的には「X-Pro1」も含めてすでに多くの人がいろいろ書いていると思いますが、ここでは個人的に気になったことを。ニコンの「D3」を仕事で3年半使っている人間の言うことなのと、下記のような理想がすべてかなうとこのカメラが一眼レフのような操作性になってしまうので、いろいろ間引いて考えてください。長いので一言にまとめると、一眼レフではありえない、コンデジではよくある操作体系なので、一眼レフっぽくしてよ! という個人的な叫びです(笑)。

 一番の要望は、ピントのマニュアル操作などで使う、ピント合わせの補助機能を拡充してほしいというものです。現在は「フォーカスチェック」として中央部分を拡大表示でき、EVFの解像度の高さもあってなんとかピント合わせができますが、ピーキング表示であるとか、「GXR」などにあったネガ表示のようなモードで合焦部分のみが浮き上がるとかの、ピント合わせを明確に支援する機能が欲しいですね。

 既存のボタンの機能という意味では、シャッター右横の「Fn」ボタンをもう少し活用してほしいですね。現在もかなりの種類の機能を割り当てられますが、不満の多いAFポイントの移動方法について、例えば「Fn」ボタンを“押しながら”方向キーを押すと移動できる、とかです。「Fn」ボタンを離すと、移動が決定されるわけです。あるボタンを“押しながら”ダイヤルを回す、とかいうのはニコンでもよくある操作体系で、素早く操作できます。

 右親指の指先あたりにあるダイヤルも、押し込むと「フォーカスチェック」モードに入り、回せば拡大倍率を変更できますが、それ以外は無く、ファインダーを覗いている間はほぼ死にダイヤルと化しているというか、カスタマイズができないようで、かなりもったいない感じです。再生モードではそれなりに使いますが、ブラインド操作で使いやすい位置にあるので、撮影中に活用できるよう設定変更の項目を追加してほしいところです。

EVFと液晶モニター

 全体的に見ていくと、ファインダー(EVF)と背面の液晶モニターの使い分けが曖昧で、それ故に中途半端に融合してしまっていることに気が付きます。液晶モニターをファインダーとして使いながら撮影する分には問題ない操作方法でも、EVFを覗きながらでは操作が難しいとか、そもそもEVFにコレを表示して意味あるんでしょうか……みたいなことは起こると思います。ソフトウェアなので、固定してしまうのではなくカスタマイズが可能になり、選べればいいと思うのですが。

 例えばシャッターを切った後に画像を数秒間確認できる機能ですが、EVFを光学ファインダーのつもりで覗いていると、撮影後に画面が固まったかのように錯覚して少し焦りますし、シャッターチャンスを逃す・逃さないとかいうハナシになるとこうしたファインダー像を邪魔する動作は致命的です。近接センサーがあるんですから、EVF上では撮影後の画像確認機能がオフになり、撮影後に規定の秒数(3秒とか)以内にEVFから目を離せば液晶モニターに自動的に確認画像が表示される、とかどうでしょうか。もちろん、EVFの方が解像度が高いですし、外光など環境に左右されにくいのでEVFで画像を確認する場面もあるでしょうが、そうしたあたりは設定で選択できればいいわけです。

 誤解のないように補足すると、撮影後の画像確認機能はオフにでき、そうするとシャッターを切って消失(のような一瞬の暗転)後、すぐにファインダー像が復活し、サクサクと撮り進められます。撮影後に素早く画像を確認したい時はあるものの、基本的にはファインダーを覗いている時は像を邪魔しない、という動作が理想と仮定すると、この画像確認はオフがメインになります。当然ながらEVFを使わず、背面の液晶モニターを使って撮影しても、画像確認はオフのままで、確認したい時だけ再生ボタンを押して再生モードに切り替えるというものです。

 例えば一眼レフで慣れた動作に沿ってみると、現在は以下のようになります。

 EVFを覗く(アイセンサーで自動切替)→ 撮影(必要に応じて連続) → EVFから目を離す → ファインダーが液晶モニターに自動切替 → 再生ボタンで再生モードに移行 → 画像確認 → 再生ボタンかシャッター半押しでファインダーモードに戻る → EVFを覗く

 後述もしますが、ここでもったいないのはアイセンサーを単なる表示切替のきっかけとしてか使っておらず、撮影者の状態の変化のトリガーとして扱っていないという部分です。例えば液晶モニターで画像を確認していても、EVFを覗けば再生モードが自動的に終了しファインダー表示に戻るとか、撮影者がどういう行動をしているのかを予測し対応するような、そういう部分に設定の幅で対応してほしいところです。

 EVFは光学ファインダーと違って、シャッターを切る前に露出の失敗をある程度まで見られるので、一眼レフほど撮影後の確認は重要ではないかもしれませんが、染み付いたクセでしょうかね。一眼レフと併用する人にとっては、こうした、光学ファインダーのように見えてそうではない挙動をするファインダーというのは違和感を拭えないでしょう。極端なところでは、光学ファインダーと同じ挙動しかしないモードがあってもいいのではないでしょうか。一眼レフユーザーは、そこからEVFならではの機能を必要に応じて追加できればいいと思うのです。一部の表示方法だけ個別に設定できるだけでなく、もっと大胆に組み合わせて使う方法を追加してほしいですね。

 なんでこんなにあーだこーだと書いてしまうのかというと、例えば仕事で使う人なら数千は下らず、何万回、十何万回とシャッターを切るわけです。シャッター切る度に必要な動作というのはたったボタン1回の押下であっても無駄が省かれるべきというのは、なんとなく分かってもらえますでしょうか(笑)。もちろん、ひとつの設定で万人にフィットすることはありえませんので、設定で幅を持たせて欲しいと、いうことになると思います。

 EVFを含めたファインダーについては視野率100%とか謳っていますが(光学ではないので半ば当然ですが)、カスタマイズで表示項目を追加するとファインダーの内側に撮影可能枚数とかが表示され正確なフレーミングができなくなります。これは表示項目を設定で減らせば解決できますが、下部にまとめるとか、EVF側だけでももう一工夫欲しいですね。一眼レフの光学ファインダーはある意味で聖域のような部分で、撮影にシリアスになればなるほど重要な部分です。先の撮影後の画像確認機能の融通の効かなさもそうですが、EVFをコンパクトデジカメの液晶モニターの延長のように考えて作り込んでしまっているのは、一眼レフユーザーからすると違和感の残る部分です。「X-E1」のコンセプトやこだわり具合からするとちょっとちぐはぐで、コンデジ気分が抜けていない感じがします。

ソフトウェアはコンデジ由来

 コンデジ気分というところで操作体系全般を俯瞰してみると、このカメラのソフトウェアはコンパクトデジタルカメラが出自であることがよく分かります。分かりやすく言うと、一眼レフではありえない、コンデジではよくあるキーアサインがなされているということです。最も象徴的なのは方向キーの「↑」にマクロモードのボタンを割り当てている点でしょう。コンデジなら方向キーを単なる4つのボタンとして扱うことはよくありますが、一眼レフではまさに方向キーとして必要なので、こうしたアサインはまずしません。方向キーのセンターがメニューボタンを兼ねているのも、同様に方向キーの汎用度を下げています。多くの人が文句を付けるAFポイントがすぐ移動できない点も、「↑」にマクロが割り当てられているせいで、撮影中に方向キーが方向キーとして機能しないことに起因しています。コンデジではあまり必要にならないでしょうが、一眼レフではファインダーを覗いている最中に方向キーやダイヤルを使うことが多いので、これらは常に汎用的な状態である必要があります。

 右親指の先あたりにあるダイヤルが活用されていないのも、コンデジにはこうしたダイヤルが無いから、と考えられます。シャッター優先モードでは、シャッターダイヤルにある数字より細かく追加的に微調整できるのですが、これが方向キーの左右で行うのですから、なぜ役目の無い背面のダイヤルを使わなかったのかと机をバンバンしたくなります(笑)。コンデジのようにボタンの数に著しい制約があるとも思えませんし、マクロモードボタンとメニューボタンが別であったなら、と思いますが、そこまでいくとソフトウェアの範疇を外れます。印字されたアサインを無視して設定変更できるようになれば、諸手を上げて喜ぶところですが……。

 操作する手が右手か左手かという面でも、コンデジのような背面液晶モニターが前提の操作体系です。個人的な理想を言うと、撮影中に操作するボタンは右手だけでできるようにまとめる、というものでしょうか。左手はレンズを保持・操作するからで、絞りリングを標準装備したXマウントのレンズと組み合わせる「X-E1」なら、なおのこと左手はレンズに添えられているべきかと思います。AFやAEボタンを左側に持ってきているのは、ファインダーを覗いた撮影を中断させる要素になっているという意味でも、やはり洗練されているとは言い難いところです。写真撮影兵器と呼びたい「D3」などの使用経験を元にあれこれ言うのは大人げない部分もありますが、ボタンの配置やソフトウェアは高度な技術というより開発ノウハウの部分でしょうから、開発者の方にはぜひ他社の一眼レフを使ってみて欲しいですね……。

 これらはあくまでソフトウェアのハナシですが、コンデジに毛が生えた程度と言っても過言ではないと思いますので、コンデジからステップアップした人には優しく、一眼レフが基本の人にはもったいないと感じられるでしょう。光学系を含めたハードウェアやその操作感・操作性は上質なだけに、背面のボタンとソフトウェアの方向性を見ていると、非常にアンビバレンツなカメラであるとも言えます。

 
 とまぁ、ねちねちこまごまと書いてますが、上記の要望は報道系のお仕事の現場で使ってみての感想なので、ユーザーのシリアス度で大分印象は違うと思います。休日に持ち出して、のんびりと散歩がてら使う分には、ファインダーの切り替えがどうとかあまり気にならないとも思いますし、実際に散歩に持ち出す限りではイライラすることなどはありませんでした。マニュアルのピント合わせの部分は逆に仕事ではあまり関係ないので、休日用の機能といったところですが。

 あとは、私のように仕事、休日とかなり環境を切り替えて使いたい場合だと、予め設定をプリセットして選択・変更できる「カスタム登録」のメニューをもっと拡張して欲しい気はします。sRGBとAdobe RGBの切り替えとかもカスタム登録に対応できれば嬉しいですね。

 いずれにしてもソフトウェアの部分は今後の対応次第なので、期待という意味でも書き連ねてみました。実は「GXR」一式を手放しており、散歩カメラが空白だったところに買ったカメラなので、後が無いというかこれしかないというか。カメラを借りて書かれているタイプのレビューは真剣度を計りかねてあんまり信用しないんですけど(笑)、買ったら買ったで良いふうに捉えたい、肯定したいというバイアスがかかり、実際はなかなか難しいものです。とはいえ、文句をつけるだけなら、個人的に気に入らないところをあげつらうだけで済み、本人がレビュアー気取りの満足感を得る以外の意味はありませんから、ここでは疑問や文句と同時に、同量の提案も含めたつもりです。長く付き合いたい、愛と期待故の注文と思っていただければと思います。