剣の女王と烙印の仔

 
 杉井光著「剣の女王と烙印の仔」(MF文庫J)です。イラストは夕仁(ゆに)氏。写真には写っていませんがこのエントリーを書いている時点で4巻まで発売されています。中世ファンタジーの世界を舞台に、血のつながりで強力な力を持ってしまった主人公が、同じく血の運命に動かされるヒロインや騎士団とともに、戦乱の中で翻弄され、抗う様を描いています。
 


 

■世界
 「剣の女王と烙印の仔」の舞台となる中世ファンタジーの世界観は、奇をてらったものではなく、およそ共有されているであろう、城、馬車、王、貴族、剣、炎といったキーワードで表せるものです。明確に無いのは「魔法」でしょうか。少なくとも4巻までに魔法の類は登場しません。その代わりといってはなんですが、主人公の傭兵の少年には謎の出自と共に不思議な力が宿っており、それが魔法に近い存在といえます。発動してしまうと額や手の甲に「烙印」が表れるその呪われた力は、戦場を例外なく混乱と恐怖に陥れる強力な力です。烙印の力をめぐっては、源泉となる部分が大きな謎として登場しており、その謎に迫る様は、国や人々の物語と並行して進んでいく部分となります。

 烙印の力とは別に、舞台となる地域の半分ほどを治める「女王直轄領」の女王にも特別な力が血で継承されており、この女王一族の存在も物語の核となっています。

 世界は、東の中小の国で組む連合と、西の女王直轄領の聖王国軍が衝突を繰り返している時代です。女王直轄領の北、大きな中海を挟んだ地域には優れた文明を持つ大国も睨みを効かせているという状況です。4巻の時点では北の大国は間接的に登場するのみで(これから関与してくる可能性が示唆されています)、基本は女王直轄領の聖王国軍と、「ザカリア」を先鋒とした諸国連合が戦乱を起こしている状況です。ここに宗教を核とした教団が加わることで、国を超えた画策も加わることになります。

 戦場における戦術や奇策を駆使した形勢逆転や、烙印の力による混乱など、一筋縄ではいかない状況がダイナミックに描かれており、先の読みづらい展開は楽しい部分でもあります。ちなみに海は移動で使われるものの、少なくとも4巻までは陸戦が基本となっています。剣撃や炎に包まれる戦場の一場面から、住人の反応や不満といった世論、各国の衰勢や政治的な思惑まで、世界が戦乱で塗り替えられていく様がミクロからマクロまで描かれます。一方で、物語の中心となって描かれる国の数は今のところ限られているので、世界大戦のような煩雑さはありません。ただ、女王直轄領の聖王国軍は登場する人物や組織も多いので、多少注意深く読み進める必要があると思います。

■キャラクター
 登場するキャラクターは杉井光のほかの著作でも有名(?)なように、ヒロインはツンデレフリークスを唸らせるツンデレぶりを披露します。3巻までの表紙を飾っているヒロインのミネルヴァは、未来を予見をする能力を持ち、大剣を振り回す強烈な剣士で、出自も未来もそのすべてが物語の中心となる存在でしょう。

 主人公のクリストフォロ(クリス)は、母親のみに育てられ、死別した後は傭兵となり戦場を転々としていたところをミネルヴァが所属する騎士団に拾われ、行動を共にすることになる寡黙な少年です。彼はその烙印の力を制御できず、戦場を度々地獄絵図に変えてきたことから、周囲の人間の命運を喰らう「獣の烙印」を持つ者として密かに戦場で恐れられていますが、ミネルヴァは予見の力で自分が死ぬことを予見しており、自分が死ぬという命運を喰らう存在としてクリスと行動を共にし始めます。クリス自身は物静かですが、烙印の力が強烈なため、とんでもない災いと背中合わせのおとなしいヤツ、という印象でしょうか。ただ、その烙印の力に抗い、内にある絶望から這い上がろうとする一面はしっかりと描かれています。ミネルヴァと共に進むうちに自身の過去と否応無しに向きあうこととなり、ゆっくりと成長していく様を見ていくことになると思います。

 ミネルヴァの所属する「銀卵騎士団」は諸国連合のひとつ、ザカリアに本拠地を置く騎士団で、ミネルヴァと年の頃は同じながら策士としての能力を開花させ始めたフランチェスカが騎士団長を務めます。フランチェスカは4巻の表紙になっているのですが、4巻での活躍もさることながら、世界の戦乱をやがて牽引していくと思われる存在として、ミネルヴァなどと同様に非常に重要な人物になりそうです。ミネルヴァやクリスは少なからず運命に翻弄されている部分があるのに対し、フランチェスカは対照的に自分が選んだ道筋をかたくなに信じ、時に非常な選択で騎士団を運用していきます。

 フランチェスカの元に集まった銀卵騎士団を束ねる主要メンバーは、寡黙で凄腕の剣士や真面目で健気な衛生兵など、いずれもキャラが立っており、にぎやかな印象ですが、4巻までくるとそれぞれの出自や背景、思惑も一部に表れ、騎士団としてのつながり、お互いの信頼といったものが真に問われる状況も出てきます。

 一方、女王直轄領の聖王国軍は政治や執行体制がそれなりにカッチリと決まっており、女王、三大公家、評議会、剣審院といった位や役職にはそれぞれ濃いめのキャラクターが登場します。こちらも権謀術数、私利私欲が入り乱れる世界で、女王の可憐さが対照的に描かれます。三大公家の人物については名前とキャラクター性をセットで憶えるのが難しい、というより刊行の間で忘れてしまうことがあるので(笑)、登場人物一覧みたいなのが冒頭にあると嬉しい気がしました……。

■ポイント
 中世風の大河戦記ものとして捉えることもできますし、烙印の力を中心としたファンタジーとしても楽しめます。クリスとミネルヴァ(強ツンデレ)の組み合わせや、女王、銀卵騎士団のメンバーなど、キャラクターを中心に追いかけても賑やかでそつなく楽しめます。

 全体のトーンは、クリスの周辺はやや暗いものの(笑)、暗くなりすぎずギリギリの塩梅でしょうか。どうしたら不幸な結末を避けられるか、という大きな流れがある気がするので、輝かしい未来に向かって疾走するような雰囲気では無いですが……ただ、物語のテンポは早く、読み終えればいつも次の展開が気になっています。タイトルによっては、3巻ぐらいまで読むと継続して読むモチベーションを失ったり、なんとなくその世界観に満足してしまったりするものも多いのですが、本作はますます先が気になっているタイトルです。
 

LED電球買った

 


 
 世間を騒がすLED電球、地元商店街の街灯すらもつい最近LEDに。LEDといえばレッド・ミラージュ。それなのに我が家といったら……そんな焦りがあったかどうかは忘れましたが、パナソニックのLED電球「LDA6LE17A1D」を買ってみました。ただ買うだけではつまらないと思い、小型のE17口金タイプが発売されるのを待っていたのですが、気がついたら発売されていたので購入した次第です。

 E17口金タイプはミニレフとかダウンライトやスポットライトみたいな器具で使われていることが多いと思うのですが、私もベッドサイドで天井に向けて照射している読書灯代わりのライト、またの名をラノベ灯とも呼ぶまどろみライトにLED電球を使いたかったので、E17タイプが発売されるのを待っていたわけです。

 シャープをはじめ、パナソニック、東芝、NEC、三菱など各社のラインナップを見ると分かりますが、現時点で電球型のE17タイプをラインナップしているのはパナだけ(パナのラインナップ)。ほかのメーカーのE17タイプはキャンドル型とかスポットライト専用とかでやや特殊。量販店でも見つけにくいですし、そもそも電球の置き換えを狙ったようなものではないようです。もっとも、各社が電球型でE17タイプを出すのは時間の問題でしょう。

 さて、個人的な用途はすでに書いていますが、そもそもなぜ買ったかと言われれば、目新しいからです(笑)。E17タイプは小型なこともあって、私が買ったブツは現時点で1個4980円とちょっとコストパフォーマンスを考える段階ではないですが、消費電力5.5W、寿命約2万時間とスペックだけはなかなか豪華です(E26口金タイプの寿命は約4万時間)。2万時間は単純計算すると2年以上になるので、1日12時間使っても余裕で4年以上持つということになりますね、いちおう。ベッドサイドに使うというのも私なりに考えてのことで、読書をしながら寝落ちしてライトを消し忘れてもいろいろダメージが少ないんじゃなかろうか、と考えたからです。消費電力と寿命を考えれば、むしろいちいち消さなくていい気すらしますね。防犯用照明とかにもいいかもしれません。
 

 

 
 ちなみに発光素子としてのLEDは半永久的に発光するようですが、製品として寿命があるのは、そのほかの部品や部材のもろもろの経年劣化によるものだそうです。想像しづらいかもしれませんが、LED電球もそれなりに熱を出すので、そういう点も影響するのかもしれません。発熱対策から本体外周をフィン形状にしているメーカーもありますね。電球型で大々的に売り出したシャープも当初は発熱に苦労していたようです。私が買ったパナの「LDA6LE17A1D」は発光部のガラス?をじっと触るのはちょっと無理っぽいぐらいの熱を持ちますが、電球の時のように器具側まで熱くなるような熱は出ていません。これなら、夏場は使用がためらわれるということもなさそうです。

 スイッチを入れてからの発光は瞬時で、電球と同じ感覚です。電球型蛍光灯のような微妙なもたつきはありません。色については電球色を買いましたが、白めの電球色といった塩梅で、電球型蛍光灯の電球色に近い感じ。リアル電球ほどオレンジ色は強くありません。この色ですが、発光素子にバラツキがあることが取説にも書かれており、複数個購入すると多少違いが分かるものと思われます。現時点ではバラツキを制御できないか選別を適度に諦めていると思われるため、色(色温度?)にシビアな場面では少々難ありといったことろでしょうか。

 あと、私はもともとミニレフ球を使っていたところを交換したので違和感は無いですが、現在のLED電球の多くは、光の方向がある程度決まっています。ダウンライトやスポットライトとしてなら問題ありませんが、横側や根元側、つまり口金(ソケット)側へは光がまわりにくいので、購入するLED電球のサイズや照射方向、使いどころをしっかりとチェックされてから購入することをおすすめします。
 

続・蔵書管理しやしゃんせ

 
 2009年3月21日に「蔵書管理しやしゃんせ」でオンライン蔵書管理サービスとライトノベル・コミックの登録、バーコードリーダーの使用、携帯からの利用について書きましたが、一連のソリューションをふつうに継続して使っています。3月は月末から利用したので参考値ということになりますが、4月からはライトノベルについて「購入金額」「読了数」をきっちり管理してきました。

まだ使ってるよ、MediaMaker
 オンライン蔵書管理サービスの「MediaMaker」(メディアマーカー)については、事務的で味気ない見た目は相変わらずですが、機能が豊富でUIが追いついてない感じも相変わらずです。最近iPhoneアプリがリリースされ、モバイル環境からの利用も一段と進んでいる様子。このまま調子に乗ってAndroidアプリもリリースしてほしいところです。というのも、Android(HT-03A)のフルブラウザでパソコン用URLにアクセスするとフレーム処理の優先度の都合か、蔵書コンテンツ側フレームが圧縮されてちょっと見辛いのと、携帯向けURLにアクセスすると蹴られて(笑)見られず、どっちつかずになっているからです。まぁ、マイノリティの哀しい叫びですが、パソコン版のフレームを2ペイン構成にして、フルブラウザで見てもなるべく見辛くならないようにして使っています。

 すでに前回も書いていますが、個人的にオンライン蔵書管理サービスを使い始めた理由のひとつは、外出先から蔵書データを参照できる点にあります。これにより続巻で何巻を買うべきか、という確認を店頭で携帯から行え、重複購入が無くなります。もっとも、新刊情報はGoogleカレンダーにブチ込んで管理しているので、チェック済みの新刊に関して迷うことはありませんが、店頭でふと見つけてしまい「あれ?……これもう買ったっけ?」なんて悩みはムヨーになっています。

 個人的にはあまり利用していませんが、オンライン蔵書管理サービスでは、蔵書データをオープンにすることで、ほかのユーザーとのSNS的な交流もできます。レビューを書いて公開したり、コメントしたりできますし、そのタイトルを登録しているユーザー数から、なんとなくの人気を推察することでもできます。

 


 

登録・管理は続いているのです
 さて、3月末の利用開始当時はライトノベルが108冊でしたが、8月31日時点で168冊ということで、5カ月でちょうど60冊購入したことになります。グラフにも出ていますが、読了数は6月に落ち込んだものの、夏期休暇効果で8月は盛り返しました。平均すると月10冊程度でしょうか。

 正統派ファンタジー系は少々硬派なものが好みで、学園系ならツンデレヒロイン罵倒系なタイトルが多い傾向でしょうか。逆にミステリー系はあまりなじめていません。SF系はもともとあまりタイトル数が多くないように思いますが、こちらは別途(非ラノベの)ハヤカワ方面から補完している最中です。ラノベ界隈でもあまりにありきたりな設定の学園ラブコメなどは、最近は様子見することが増えてきたように思いますが、それでも基本的には琴線に触れたものはまず買って読んでみるというスタンスはこれまで通りだと思います。

気になるタイトルは自分に聞け
 当サイトでもエセレビューを書いといてナンですが、レビューの類はあまりアテにならないといいますか、私は、絶対値としての善し悪しや他人の評価軸での評価を参考にするわけではなく、あくまで私が面白いと思え、楽しめるタイトルを探しているだけです。高尚であることや稚拙であることは関係なく、売れているかどうかも関係ありません。上下ではなく左右の軸の世界です。なので、きっかけはともかくとしても、究極的には読んで判断するしかないというのが今のところです。

 信頼できるレビュアーを探し当てればいいですが、それとて場合によってはファーストインプレッションの新鮮味が薄れ、本来なら最も楽しいはずの初めて読む時間が、他人のレビューの評価を再確認するというある種の汚された時間になりかねないわけです。印象操作に強くない私は特に。

 ぶっちゃけ、買ったタイトルが自分的にアタリかハズレか、それに一喜一憂するのも面白いと思うんですけどね。「俺が買うタイトルは絶対にハズしたくない」ってのも分かりますが、別に生死を賭けた争いを繰り広げているわけではないので、ハズレなタイトルを手にする過去の自分を認める余裕もまた面白いものですし、自分は俗なのか孤高なのかとかアホな分析から趣味趣向の変遷まで、自分自身が柔軟になるきっかけになっています。

 それでも右も左も分からない頃には、売れ筋やちょっとした話題・評判をとっかかりにして探していましたが、最近は何となく定番の作家や、出版社ごとの大まかな傾向もつかめてきました。あらかたの出版社の新刊は継続してチェックしているので、今は、既刊で自分的に読んでおくべきタイトルを地道に探しているところです。
 

蔵書管理しやしゃんせ

 
 途中で飽きるかなと思っていたら、あまり止まることなく増え続けているラノベですが、なにぶん手を出したのが最近ですから、長く続くシリーズものの1巻をまず買って、面白ければ2巻、3巻と順に買っていく、というパターンもしばしば。一方で、他のタイトルも並行して読んでいるわけですから、「アレは最新巻が○○日に発売、ソレは3巻まで持ってて面白かったから4~5巻目まで買ってもいいかも……そういやコレは何巻目まで持ってたっけ? あれれ?」 といった事態が起こりうるのですな。家のPCでAmazon.co.jpを前に悩む分には書棚に見に行けってだけのハナシですが、外出先だとそうもいきません。まぁ、ラノベに限らずコミックをたくさん集めている人も、同様の状況に直面することはあると思います。

 そこで、パソコンを使った蔵書管理、というところに行き着くのですが、ここでは、ソフトウェアを使ったオフライン主体のものと、Webサイトで提供されるオンラインサービスの2種類に大別できると思います。もっとも、ソフトウェアでオフライン主体といっても、最近ではAmazonなどのデータベースと連携する機能が充実しているので、オフラインというより1台のパソコンで管理する、という考え方が正しいかもしれません。

 もう一方の、ブラウザでアクセスして利用するオンラインサービス型では、Amazonなどのデータベースとの連携はもちろん、外出先でもWebサイトにアクセスすれば蔵書のデータベースを管理できるのが最大の特徴でしょう。会社やネットカフェ、移動中のノートパソコンからも利用できますし、一部では携帯電話からのアクセスにも対応しています。

 
MediaMarkerを使ってみる
 そんなわけで私はオンラインサービス型として「MediaMarker」(メディアマーカー)を試してみました。総合トップの微妙なロゴはともかく、検索や登録から未読・読了などのステータス、購入金額の管理、ジャンル、タグ、コメントの共有など、なかなか機能が豊富です。書棚のデータにあたる「バインダー」は公開・非公開が可能なので、自分専用としても使えます。

 この手のサービスは、始めるときの膨大な登録作業をいかに簡単に済ませるか、というところがミソだと思います。私にしても、始めてしまえば、月に数冊~十数冊の登録で推移するでしょうから、最初に登録しようとしている100冊程度はまぁどうとでもなるレベルとしても、とりあえず一番最初の登録作業が難関というか、めんどくさいわけです。

 
バーコードリーダーも使う
 そこで、登録をより簡単にするのがバーコードリーダーなのですな。コンビニのPOSレジでおなじみのアレです。上記の蔵書管理ソフトやオンラインサービスでもバーコードリーダーに対応しているものが増えていると思います。入力の簡単さからいって、100冊以上を登録しようとする人は必須といっても過言ではないかもしれません。最初だけでなく、継続的に登録する際にも、ピッと簡単に済ませられるのはなかなかポイントが高いと思います。また、キーワード検索の結果から選択する場合では、類似したタイトルやバージョン違い的なものまで表示され迷うことも多いので、ISBNを読み取ってドンピシャで指定できるのはちょっとした安心感もあると思います。

 昔と違って現在ではUSB接続のものも売られており、ざっと調べたところでは秋月電子エフケイシステムで売られている製品がお値段的に手頃ではないかと思いました。このあたりでは、USB接続型なら最安は5000円台となっています。ヤフオクならもう少し安いものもあるようです。

 ワタシはといえば、いかにもレジ機器っぽい形状はちょっとなぁ、とか思っていたので、エフケイシステムのペン型バーコードリーダー「PEN-400PX-U」を買ってみました。金属ボディがなかなかソソる一品ですが、レジっぽい形の製品よりはお値段は少し高め。サイズや太さは4色入りボールペンやこだわりグリップ系ボールペンぐらいのもので、使わない時も邪魔にならない感じです。スタンドも付いてきました。

 ペン型なので、当然ながらレジっぽいやつより読み取り時の操作は一癖あります。レジっぽいやつは、ウィンドウ部をかぶせたり、照査される光をバーコードに当てたりするだけでいいですが、ペン型はバーコード上をなぞる操作が必要です。もっとも、慣れればたいしたことは無いのですが、例えば1000冊を一気に読み取る、なんて場合なら、さすがにレジっぽい形状の方がいいかもしれません。

 ペン型での操作のコツは、なぞる速度を一定にする、けっこう速くなぞっても大丈夫、なぞる最初と最後に余白をもたせる、といったところでしょうか。ペン先が軽く接触していれば、けっこう斜めの角度(45度まで)でも大丈夫で、おそるおそるではなくサッと一気になぞると良いかんじです。ちなみに、なぞる方向は右から左、左から右のどちらでもOKです。

 USB接続型ということでパソコンに手軽に接続できますが、PS/2接続型でも基本的には同じで、専用ドライバなどのインストールは不要です。バーコードリーダーの類は、パソコン側からはキーボードとして扱われます。つまり、バーコードから読み取られたデータは文字列に変換され、それがキーボード的なものからの入力としてカーソル位置に入力されるだけなのですな。なので、ISBNやJANの数字をキーボードでカタカタ手で入力するのと、バーコードリーダーで読み取って入力するのは、パソコン側からすれば同じことなわけです。10~13桁とかの数字の手入力の手間を省くっていう、ただそれだけです。もっとも、何十冊にわたって10桁以上の数字を間違いなく入力するってのがめんどくさいわけで、そこがペンでなぞるだけになるなら、個人的には導入の価値があると思った次第です。まぁ、ただ入力デバイスが好きなだけという説もありますが……。どうでもいいですがそのへんに置いてあったハードディスクに貼り付けてあるプロダクトナンバーのバーコードとかも読めましたし、とりあえずふつーのバーコードの類だったら普通に読めます。

 バーコードリーダーでちょっと面白かったのは、設定もバーコードを読み取って行うところです。マニュアルとして、設定変更のためのバーコードが記載された取扱説明書が付いてきます。基本的に業務用なのでさまざまなシステムに対応できるよう、いろいろな設定が用意されているのですが、例えば読み取った文字列の前、あるいは後に特定の文字を常に追加する、などです。デフォルトでは読み取った後にEnterキーを1回入力する設定になっており、こういった挙動も変更できます。また、USBプラグの近くにある台形のユニットからは、バーコードの読み取りに成功すると音がでるようになっているのですが、これを無音にしたり、音程や音の長さを変更することができます。最初は「ピー」だったのを、音が低めの「ピィィィ」とか、高めの「ピッ」とかに変えられるわけですな。

 
実際に登録しやしゃんせ
 さて、ペン型バーコードリーダーのハナシはともかく、実際に登録です。手元には100冊ぐらいのラノベがあるので、これを登録するわけですが、この手のサービスは、Amazonでキーワード検索した結果をポチポチと選んで、持っているリストとして登録するというのが一般的です。

 MediaMarkerには一括登録フォームが用意されており、バーコードリーダーを使うなら、ここに読み取ったISBNをじゃんじゃん入力していけば、Amazonを参照して情報を一括登録できます。前述の通り読み取った文字列に改行が追加されるので、一括登録フォームへの入力では読み取る度にキーボードやマウスを操作する必要は無く、次々にバーコードを読み取っていくだけです。ちなみに私の環境では、バーコードリーダーでの入力時、日本語入力モードをオフにしておかないと、バーコードリーダーからの改行コードが正しく認識されませんでした。

 一括登録時には、初期値としてタグや読了などのステータスを予め決めておくことができます。なのでラノベを一括登録するときはタグに「ライトノベル」と入るようにしておきました。ラブコメとかファンタジーとか内容を反映させたタグも入力したいのですが、一括登録という作業では初期値を頻繁に変更するとかいうことになり、ちょっとめんどくさいのでそこは諦めました。

 手元にあったのは100冊すこしですが、バーコードリーダーでの読み取り作業自体は15分もかからずに終わってしまいました……。どちらかというと書棚から出したり入れたりしていたほうが時間がかかっていたかもしれません。思いの外早く終わったのでついでにコミックも入力してみました。ちなみに書棚がパソコンと離れていて、本をパソコンの前まで持ってくるのがめんどくさい、という人は、ノートパソコンにバーコードリーダーを接続して自らが書棚の前におもむく、というのがいいかもしれません。オフラインならテキストエディタに一端入力して、後から一括登録フォームにコピペすればいいですし、無線LANが使えるならその場で登録できると思います。

 MediaMarkerは基本的にAmazonの情報を参照しているので、Amazon側の情報のブレもそまま反映されてしまうのは仕方ないというか微妙なところ。例えばAmazonで、コミックの「ケメコデラックス!」は出版社が「メディアワークス」となっていますが、4巻だけは「アスキー・メディアワークス」で登録されており、MediaMarkerの表示では出版社でソートすると4巻だけ違う場所に表示されてしまいます。もっとも、これはMediaMarker側がISBNに含まれる出版社コードもソートに反映させれば解決するような気もしますが……。

 
 外出先から確認したいという当初の目的からすれば、本領を発揮するのはこれからということになりますが、バーコードリーダーの導入はともかく(笑)、興味がある人は試してみると面白いのではないでしょうか。
 

とある飛空士への追憶 / 恋歌

 
 犬村小六著「とある飛空士への追憶」「とある飛空士への恋歌」(ガガガ文庫)です。戦闘機に乗る「飛空士」と、全貌の知れない謎が残る世界で繰り広げられる恋や冒険の物語です。

 2008年2月に発売された「とある飛空士への追憶」は1冊で完結する物語で、2009年2月に発売された「とある飛空士への恋歌」と物語上で直接のつながりはありません。作者いわく「~恋歌」は、「~追憶」が発売される前から構想されていたとのことで、世界観は概ね共通しています。また、「~恋歌」はシリーズ化する予定のようで、1巻だけではお話が終わっていません。

とある飛空士への追憶
 ストレートで今風な飾り気も無く、正面突破の綺麗な物語だと思いました。作者いわくイメージは「ローマの休日」とのこと。簡単に言ってしまうと、お姫様になる予定の女の子を敵地近くから嫁ぎ先に運ぶため、複座の後ろに乗せ、単機で大海原を横断する物語です。大空を単機で飛ぶ開放感や追撃をかわしていく際の緊迫感のある空戦の描写、そして身分の違いすぎるパイロットと後の皇妃、この二人の関係ははたして……といったところが本作の根幹であり、読んでいる上での醍醐味でもあります。

 舞台となっている話というか、期間はそれほど長期に渡っているわけではなく、話の中心を海を渡る場面に絞りこむことで内容は濃密になり、空戦の緊迫感から、お互いの心情の変化といった些細なことまで、急ぎすぎることなく丁寧に描かれていると思います。歳のせいでしょうか?(笑)、結末近くではちょっと目頭が熱くなっていましました。とにかく感動したい!なんて時には男女を問わず、誰にでもお勧めできる1冊だと思います。

とある飛空士への恋歌
 「~追憶」と世界観を同じくしながら、登場するキャラクターや国家(恐らく時代設定も)が刷新されています。作者いわくイメージは「ロミオとジュリエット」とのこと。人物の関係はこの一言で済んでしまう節もなくはないですが、どこまで厳密にロミオとジュリエットをイメージしているかどうかは、読者的に気になるところです。

 あらすじは、表向きには身分を隠している元皇子が、空を飛ぶ島「イスラ」の旅に戦闘機部隊の一員として同行するというもの。これを政治的な追放と自覚する一方で、「元」皇子の元凶ともなった革命の旗印である少女もまたイスラに乗り込むということで、空への憧れや身を焦がすほどの復讐心といった複雑な思いを抱えて旅が始まることになります。

 イスラは簡単にいうと「ファイブスター物語」のフロートテンプルみたいなイメージなんですけど、イスラは最初から浮いていたところを改造して超巨大戦艦みたいにしてしまったところが、イレーザーエンジンで後から浮かせたフロートテンプルと違うところです。

 「~追憶」ではこの世界の不思議の片鱗が出てくるものの、短期集中的エピソードであったことから、世界の不思議について多くは割かれていませんが、実はこの世界、いわゆる世界地図が完成しておらず、登場する国家の人たちは、自分たちが住んでいる世界の海がどこまで続いているかを調べきれていないのです。数カ月進んでも海ばっかりなので飛空艇の中で仲間割れして帰ってきました、的なことを繰り返しており、最近になって発見された空飛ぶ島「イスラ」を使い、世界の端、「空の果て」を見つける大航海時代さながらの空の旅が、本作の主要な舞台になります。

 1巻では主人公である元皇子やその他のキャラクターのこれまでの生活に焦点が当てられており、登場人物のバックグラウンドをしっかりと描いている印象です。特に元皇子は、「元」がつく原因となった革命やその後に起こった厳しく辛い期間がしっかりと描かれており、彼の人格形成(の負の部分)の過程を読者が共感できるようにしていると思います。ロミオとジュリエットと違うのは、革命後に拾われた養父+三姉妹との生活がある点で、イスラでの旅には、三姉妹のうち誕生日が元皇子と1日違うだけで義妹ということになった(少々じゃじゃ馬な)女の子と一緒に行くことになります。元皇子側は1巻でしっかりと描かれていますが、逆にジュリエットに相当する人物はどういう性格かとかがほとんど分からない状態で、これは今後の展開の中で描かれることに期待したいと思います。

 作者いわく空戦は中盤以降にしっかり登場するということで、中盤までは登場人物同士の描写が中心になるのでしょうか。1冊で完結している「~追憶」と違い、「~恋歌」ではすでに恋路がこじれそうな要素が散見されるので、一筋縄ではいかないだろうなぁという期待(?)もあり、複雑な関係がじっくりと描かれていくのはシリーズものの楽しいところです。イスラの旅の果てに全く知らない世界や文明が広がっていたら?というストーリー展開に対する疑問や期待もつきませんし、続巻が楽しみなタイトルです。